先日BBCニュースで自分とは外見がかなり異なる、ハーフの子を持つ親の悲しい体験談を読んだ。
ロンドン在住のある黒人の英国人女性と白人の英国人男性のカップルにとても可愛い赤ちゃんが生まれた。ここまではよくある事だけれども、その赤ちゃんはハーフだけれども肌の色がとても白くて一見してハーフには見えなかった。その女性が自分の赤ちゃんを抱いていたらいろんな人から「この赤ちゃんは誰の赤ちゃんなの」から始まって「肌の色が全然あなたと違うやん、親子って全然わからんねー」と心ない言葉を投げかけられた。
時には我が子のナニーと間違えられたり、見知らぬ黒人男性が「なんで白人の子供を産むねん」と言いがかりをつけてきたりする事もあったという。
「心ない言葉を投げかけられて気が滅入ってきた」というその女性の言葉に私も悲しくなってくる。
また別に三人の子供を持つスペイン人女性とナイジェリア男性のカップルの体験談があった。
彼らの三人の子供はそれぞれ肌の色が全然違うらしく、末っ子の娘さんが一番お父さんの肌の色に近い。ある日お母さんが末っ子をプレイグループに迎えに行って娘を抱きしめていると、見知らぬ子がやってきて「あなたはこの子のお母さん?」と聞いてくる。「そうよ」と彼女が答えると
「この子ってすごく黒いけどこんなに黒くてもこの子の事愛してるの?」と言ってきたらしい。「何が辛いって可愛い我が子がこの会話を聞かなければならなかった事です」とその母は言っていた。
これらは人種差別、偏見が根底にあり、本当に胸の痛む話だ。
どの人の祖先でもいつかどこかでは異人種のDNAが入っているはず、誰だったか覚えていないが日本人のコメディアンが遺伝子検査を受けたところ、御先祖様の中にアフリカ人やインド人がいる事が判明した話を聞いた事がある。世界中の人間がこれを再認識できたら異人種に対しての偏見は減るんだろうか?
ハーフであるうちの娘も親と外見が違う為に一度嫌な経験をした事がある。まだ12歳で中学生になったばかりの頃の事、いつものように時間のある日は夫が長女をバス停まで見送りにいった。その日は寒かったのでバスを待っている間長女は夫に抱きつき、夫は長女の背中をさすりながら暖をとっていた。我が家ではいつも手をつないだり、抱っこしたりするのが日常的であたり前の事だからこれになんの疑問も湧く事もなかったし、そんな親子の光景は世間に山とある。
でもそれを見ていた誰かが「中年の白人男性が若い子供と戯れあっている」と警察に通報した。外見が少し異なる二人はその通報者には親子には見えなかったんだろう。夫は小児性愛者として疑われたのだ。
警察がやって来て長女を夫から引き離して横に連れて行き「この男性は誰か」と質問した時は夫と長女は怒りよりも恐怖でいっぱいだった。誤解はすぐに解けて警察は謝って来たが、「誰かが通報したら警察は必ず動かないといけないので仕方ない事、娘さんが動揺しているのならカウンセラーを紹介しますよ」と言って去っていった。
その後夫はオフィスに着いてこの事を同僚に話すと、ジャマイカ人の夫との間にテーンエイジャーの息子がいるイギリス人の女性が「私も息子と一緒にいる時、親子と思われない事はしょっちゅうあるし、息子は時々警察に呼び止められるわよ。自分の自転車にのっている時、少々高価な自転車なのでこれは誰の自転車かと警察が聞いてくるらしいよ。はじめはやるせなかったけれども今はもうまたかと慣れてきたわ」と自身の体験談を話してくれたという。
人種の坩堝であるロンドンはハーフの子や親にとってはすごく住みやすみ街だ。私が出会った若者の半分以上はハーフだし、どの子も自分の生い立ちをすごく誇りに思っている。
それでも同じハーフの子を持つ親としてこんなニュースを読むと本当に心が痛む。でもわかっている、大切なことはなんであれ常に愛を持って世の中と向き合っていかなければならないことを。