ベジタリアン

私の夫は30年前まではベジタリアン、今では魚を食べるペスカトリアンになった。

彼がベジタリアンだったのは、動物愛護やライススタイルの観点からではなく、体が肉類を受けつけなかったからだ。

今でこそベジタリアンもヴィーガンも珍しくはないけれども、夫が子供の頃、オーストラリアの片田舎では、「お肉が食べれません。」なんていうと「何やそれ、何をふざけてんねん!」ってな感じで見られていたらしい。友達のおうちで食事をご馳走になるのがとても恐くて、お泊まりするときは、行くよりも自分の家に友達を来てもらうようにしていたらしい。

お肉が食べれない夫を心配した彼のお母さんが、彼を医者に連れて行くことに。

「この子は自分の体が必要としているものはちゃんと食べてますよ。卵は週四回あげるようにして、あとは豆などからタンパク質をちゃんと取ってください。」この医者のアドバイスがあってからは彼の家族も夫の肉なし食生活を受け入れた。でもBBQ大国、ステーキサンドウィッチ王国のオーストラリアで夫が普通に外食を楽しめるようになったのは、彼が成人してメルボルンに引越ししてレバノン料理と出会ってから。それまでは家族がローストチキンを楽しんでる時、彼はもっぱらフレンチトーストやサラダを食べて喜んでいる日々を送っていた。

夫が魚を食べるきっかけになったのは、お刺身と握り寿司がきっかけ。彼の家族はイギリスやアイルランドの食文化を受け継いでおり、オーストラリアの内陸部に住んでいて新鮮な魚があまり手に入らなかったことも手伝って、美味しい魚料理を知らずに育った。そんな夫も今では魚をさばけるようになったからすごい。

とにかく魚が食べられるようになって、食のレパートリーと外食先の選択肢もひろがった。

今のロンドンでは、ベジタリアンはレストランの選択にほとんど問題がない。ほとんどのレストランがベジタリアンフレンドリーだし、というかベジタリアンの選択肢がないとレストラン業も経営していけないと思う。長い間お肉料理だけが専門だったイラン料理のお店でも、最近では野菜だけのシチューとかがメニューに上がっているし、お洒落なベジタリアンレストラン、ヴィーガンレストランも増えている。インド料理、レバノン料理、イタリア料理、マレーシア料理なんかは野菜だけの料理も多いので、ベジタリンにはとても人気がある。

私自身はまだ行った事がないが、ロンドンにあるベジタリアンのレストランMIldredsは大人気だ。

大学でSustainability(環境の特続可能性)を専門に学んだ長女や彼女の同世代の友達には、牛の飼育による環境への悪影響を考慮して、なるべく牛肉を買わない、食べないというスタンスをとっている若者が結構いる。牛の飼育にかかる水の使用量が他の畜産物にからべて以上に多いらしい。

私の周りにも、牛肉はあまり買わないという友人が多い。

実際、野菜だけの夕食にする時は、低コストで、なんか体にいい事をしている気分にもなってくる。私が和食のベジタリアン料理を作る時は、野菜の天ぷらまたはかき揚げ丼に、千切り大根の煮物、ピーマンの炒め煮、人参のきんぴら、白菜の炒め煮、揚げなすと家族が大好きな料理が多くて、肉や魚がなくても充分に美味しくいただける。

ある日、日本に出張に行くことになったベジタリアンのインド人の友達に、日本で食べれる物のリストを作った。揚げ出し豆腐、なずの田楽、大根の煮物、焼きおにぎり、山菜そば、野菜天ぷらうどん…

ロンドンに戻ってきた彼は「日本は今までいった国の中でも一二を争うほどベジタリアンフレンドリーな国や!ベジタリアンヘブンや!」と興奮して、日本で何を食べたか逐一説明してくれた。

精進料理もあるし、確かに家庭料理には野菜だけの一品も多いかな?

普段は牛肉に対して特別な思いがない私。でも日本に帰って焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼きを目の前にしたら、その時はもう食べる、食べる。やっぱり美味しいから、食べずにいられない。

まあどの人も自分の好きな物を食べて、健康にも考慮して生きるのが一番やね。

これも長女が作ったセルリアックの
ステーキ
長女が作ってくれたブロッコリー、サバ
入りトマトソースのスパゲティー

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