8月最後の連休にロンドンから1時間半かけて英国南部の海岸の街、イーストボーンに今年もまた歩きに行ってきた。
一日中歩き続けて疲れていたので、帰りの電車の中ではボーッとしようと思っていた矢先、賑やかそうなカナダ人とメキシコ人の3人組が私たちの後の席に座った。
これはうるさくなるなーと思うやいなやその3人はいきなりペラペラと大声で話し出した。
めちゃくちゃうるさい、でも聞いていると3人は自分たちのお気に入りのロンドンのレストランの話をしている。聞くつもりはなかったけれども大声で話す彼らの会話は同じ車両の乗客は全員聞こえているはず。
3人はレストランの事をよく知っていた。話の内容から3人がグルメ志向なのもよくわかるし、私の知っているいい店の事も話している。
本を読んでいた長女も「めっちゃうるさいけれどよく知ってるみたいやからさっき言ってたお店の名前メモしとくわ」と3人組のおすすめのレストランの名前をメモしていた。
いろんな人と乗り合わせるのが電車の旅。
その日の朝もかなり混んでいた車両の、6人がけの座席を1人のおばさんが陣取っていた。そこに若者が2人やってきて空いてるそれらの席に座ろうとしたらおばさんが「ごめ~ん、次の駅で友達が乗ってくるからこの席は空いてないのよ」と答えている。若者はおとなしく立ち上がり、周りの乗客はみんな呆気にとられたまま。
そして次の駅についた。でもこの車両にやってくるはずのおばさんの友達は一向に乗ってこない。そこでおばさんは友達に電話をかける。「今どこにいるん?席をとってるから早くこっちの車両に来て~!この席に座りたいと思ってる人がいっぱいいるから、えっ?もうそこでいいの?うんわかった」 結局おばさんの友達は別の車両で席を見つけ、おばさんは少し離れたところにいてた先ほどの若者に「友達は別の車両で座ってるからここにすわってもいいよ~」とまるで座席を自分の所有物のように話している。このやりとりには私たちを含め周りの乗客はけっこう笑わせてもらった。
みんな前方を見て座るバスと違って人と人が向きあって座る電車では近くに座っている人と話す出す事だってある。
スコットランド、グラスゴーからの帰りの電話でもちっとしたドラマがあって笑わせてもらった。
まずはキセルをしてそうなおじさんが近くにいた。車掌さんがやってくるたびにその男性はどこかに消え失せる。でも消えるたびに持っていたスーパーのレジ袋を毎回違う席に置いていく。通路を経て隣の席にそのレジ袋を置いていった時は私も結構その袋の事が気になり出した。
ちょうど車内アナウンスで「怪しいものを見つけたらすぐに報告してください」と言ってるし、次車掌さんが来たら報告しよ~っと思っていると次の駅に近づいてきた。その瞬間急にそのおじさんが戻ってきて、レジ袋をとったと思うや走ってその駅で降りて行った。
キセルの成功やな!
これでロンドンまでゆっくり帰れるな~と思ったのも束の間、今度はランカスターという駅で明らかにサッカー試合後のサポーターがそれも全員男性が乗ってくる、乗ってくる。電車内で大声で自分たちのサポートチームの歌を歌うわ、ビールを飲みまくるわのどんちゃん騒ぎ。「あーやめてくれ~」と願っている所、今度はワインを片手に持った酔っぱらいの若いサポーターが本を読んでいた次女の隣に座り出し「この本なんていうの、この本ええか~、どこ行ってきたん?」と話かけてくる。
それに対し次女もちゃんと答え、なんやかんやで長女も私もこの会話に入り出したと思うや、その酔っぱらいの友達も近くに座り出して、結局1時間半の旅の友となった。
話をしながらお互い住む世界が全然違うことを実感。「どこのサッカーチームをサポートしてんの?」と聞かれた時は答えに困ったけれど「夫がオーストラリア人やからサッカーよりのラグビーを見るんでサッカーのプレミアリーグのことはようわからんわ」と答えたら意外にも「オージーはいいなーアメリカンの話すジョークはうさんくさいけど、オージーは好きや」って会話に繋がりおさまりホッとした。
この交流自分1人やったら私も娘達も怖かったと思うけれど、過ぎた今となればなんか心暖まるひと時と感じる。この広い世界で自分の人生のほんの一瞬の時空を共有する、電車で乗り合わせる人間、そんな人たちから笑いをもらい、ありがたい、ありがたい。