先週はイギリスの学校では学期の中間、ハーフタームだったので、私は冬休み中の娘に逢いにまたリスボンに行ってきた。
ちょうどポルトガル政府もイギリス政府もワクチン接種者には渡航前や帰国後のPCR検査義務を取り除いたので、今回の旅はとても気持ちが楽。飛行時間も通常2時間半はかかるところが風向きのおかげで2時間10分ですみ、飛行機が着陸してから20分後にはもう娘に会えていて、改めてヨーロッパ間の飛行機の移動は早くて感激した!
噂によるとリスボンはヨーロッパの街の中でも、晴の日が一番多いらしく、私が行った時も空は真っ青で、白いモザイクの石畳に陽光が反射して街全体が輝いていて、それだけで旅行気分に拍車がかかってくる。
この街に来るといつも食べたくなるものがある。イワシ、スズキ、タラなどのいろんな魚のグリル、スパイスのきいたチキンの炭火焼ピリピリチキン、煮込んだ豚肉のサンドウイッチ。でもそれ以上になんと言って目にするとついつい買って食べてしまう伝統菓子が一番の魅力のような気がする。
リスボンで見かける伝統菓子は、フランスあたりで見かけるような小綺麗なお菓子ではなく、卵をたっぷりと使った、見た目も家庭的で、なんか心がホクホクしてくるような、昔から味も形も変わっていないであろう懐かしさを伴う焼き菓子が多い。
日本人でポルトガル菓子を研究されてきた智子ドゥアルデさんの著書「ポルトガルのお菓子工房」によると、最近のリスボンのお菓子屋では本物の伝統菓子は売られておらず、少し地方に行かないと昔ながらの伝統菓子は食べることができないと書かれていたけれども、何もわかっていない素人の私にはリスボンで見かけるお菓子でも魅力は充分!
でも今回はもう何年も続いている、伝統菓子をいただく機会に恵まれた。
リスボンから電車で1時間ほど北にいくと緑に囲まれ、宮殿や城跡も残りユネスコの世界遺産に登録されているシントラという街につく。そしてこの街は伝統菓子トラヴセイロとケイジャータが生まれた街で、この街にきた旅行者はみんなこれを食べにくると聞く。
私たちは早速Casa Piriquitaというお店でトラヴセイロをいただいた。パイ生地にアーモンド入りの卵黄クリームを巻き込んだお菓子、トラヴセイロはポルトガル語で枕という意味を持ち、このお菓子も枕と同じ形をしている。パイの上にも砂糖がふりかけられていて、かなり甘めの印象を受けるけれども食べてみるとしつこい甘さではない。
次にケイジャータという、外側はパリパリとした薄い皮で、中は甘さ控えめなフレッシュチーズを入れて焼いたお菓子。
今回は1756年から続いているQueijadas Da Sapaというお店でケイジャータをいただいた。味的には控えめな味、シナモンの香りが微かにし、確かに歴史的なものを感じさせてくれる味!
やっぱり老舗のお店でいただく事自体、嬉しい気分になる。味がどうであれ、土地の人々がずーっと食べてきた物を旅行者も経験できる事自体に喜びを感じさせられる。ちょうど伊勢に行って赤福餅をいただくのと同じかな?
日本のカステラの原型であるパン・デ・ローを食べた時はやっぱり感動。このパン・デ・ローには生焼けのものとしっくり焼かれたものとあるらしいが、私が今回いただいたリスボンにあるCasa Brasileitraのものは完全に火が通っていた。でも確かにカステラを思い起こさせるしっとり感がある。
卵と砂糖、そして小麦粉といったとてもシンプルな焼き菓子、これを最初に口にした日本人はこの味をどう思ったんだろう。戦国時代の日本に行ったポルトガル人はこれを持っていたんだろうか?
そして以前も書いたけれどもポルトガル菓子で一番有名なのはパステイシェ・デ・ナタ。
最近のロンドンではいろんなお店で売られていて、専門店もできている。日本でもエッグタルトとして売られていたのをみた事がある。
智子ドゥアルデさんがおっしゃるように、ポルトガルには甘いけれども和菓子をほうふつさせるお菓子がある。ここにきてもっとポルトガルのお菓子を知りたくなってきた。焼き菓子王国ポルトガルのいろんなお菓子が今後もっと世界デビューをしていくのもそんな遠い先ではないような気がする。