私は去年の9月から2年生のアートの授業を担当することになった。
アートのプロではない私が、ちょっとだけクリエイティブな事をするのが好きという理由でまかされた任務でとにかく責任を感じる。特に授業がzoomになった今は、児童の隣に親が座っている可能性があるのでなおさら緊張。だからこちらもいろいろと勉強、リサーチをして授業内容を考えている。
私が働いでいる学校は私立なので、授業内容も国が定めているナショナルカリキュラムに着実に従う必要はなく、各学年で必ず学んでおくべき事柄を教えた後ならば、各先生のアイデアが反映された授業ができるのが特徴。
どころでアートの授業を考えている時にある事に気がつき、美術史を学んだ次女にも指摘された事がある。
それはイギリスのアートレッスンはその内容がEurocentric(ヨーロッパ中心主義)という事だ。
オーストラリアのアボリジナルアートなども教えるが、でもやっぱりゴッホ、ゴーギャン、モネ、ピカソ、ルノワール、ホックニー、ターナーなど西洋美術家の絵画をモデルにする事が圧倒的に多い。
だからこそ私は西洋以外の国々の作品を紹介していこうと心に決めた!この広い世界にはいろんな国のいろんな形のアートがある事を幼いうちから知ってもらいたいし、それによって新たな自分の好きな世界が広がる可能性もある。
先週は暖色、寒色の勉強の一環でメキシコのウイチョル族の月と太陽の絵を描いた。これは私もすごく楽しめて子供達にも大好評。次は葛飾北斎の富士山のコラージュと中国陶器の青花の絵付けを紙皿でする予定。
同じような事は歴史の授業にも当てはまる。まあどの国も小学生に教える歴史の内容は自国が中心で、ここイギリスの2年生の歴史の授業内容も1660年のロンドン大火、フローレンス・ナイチンゲール、チュウーダー朝のヘンリー8世、エリザベス1世、ヴィクトリア女王、エリザベス2世ってところ。
でも見識があって教養の深い私の同僚かつ担任の先生は、フローレンス・ナイチンゲールについて教える時に、同じ時期にフローレンス同様クリミア戦争で負傷した兵士の看護につくしたスコットランド人とジャマイカ人のハーフ、看護婦のメリー・シーコールについて子供たちに教えることも忘れないし、かつて大英帝国はイギリス人が誇る黄金時代と教えていたイギリスの歴史を、植民地化された人々の生活がどうだったかもちゃんと教える良識も持ち合わせているから、私も隣にいて心から嬉しく思う。
まあ子供は賢いので、ヘンリー8世に6人の妻がいて、そのうちの2人を処刑したなんて聞いたら「この王は良くない、恐ろしい王、なんか気まぐれな人間みたい」とこちらが説明しなくてもちゃんと人間観察はできている。
その上今年のクラスはほとんどがロンドン生まれだけれども外国籍だし、担任の先生はアイルランド人とイギリス人のハーフ、そこに私がいるのでイギリスの歴史を学ぶって言ってもやっぱり他国の歴史を観察するって感じでなんかおかしく思えてくる。「あー気の毒に~」ってな感じ。
とにかくアートの先生が私になってしまったかわいそうな2年生児の為に日々インターネットでアート情報を検索している私。教えている私が実は一番学ばさせてもらっている感じだ。