食のあれこれ

私は子供の頃から歴史が大好きだった。多分人のやってきた事をのぞき見するのが好きだからかなと思う。

特に一番興味がある分野は食べ物の歴史。

ロンドン大火事の最中に日記をつけていたサミュエル・ピートは、自分の家にもいよいよ火の手が回ってくると判断した時、避難する前に家にあった高価なイタリアチーズ、パルミジャーノを自宅の庭に穴を掘って埋めておいたと読んだ時は「確かに今でも美味しくて、高価なパルミジャーノやからな~」と妙に納得できたし。

コロンブスの新大陸発見によって、中南米からトマト、ポテトなど新しい食材がヨーロッパに持ちこまれた。と知った時は、それ以前のベネチア、フィレンチェ、ジェノバなどのイタリア都市国家には今ではイタリア料理の代表になっているトマトソースはなかったことになるので、「じゃあいったいどんなものを食べてたの?」と知りたくなってきた。

トルコ料理にはManti ( マントウ )と言うワンタン料理があるけれども、それは昔トルコ民族がまだ中央アジアで遊牧生活を送っていた時、国境を接するモンゴルや中国で食べられてたワンタンに起源があると知った時も納得できた。

また1533年、フィレンツェ共和国の大貴族メディチ家のカトリーヌが後にフランス王アンリ2世となるオルレアン公に嫁ぎにきた時、当時の貴族の慣例に従いカトリーヌはフィレンツェから料理人や菓子職人をフランスに連れてきた。それまではフィレンチェやヴェネチアの方が文化的に洗練されていたと言われており、それを機にフランス料理も洗練されていったと言われている。今フランスのビストロで必ずメニューに入ってるオニオンスープも、アーティチョークもこの時フィレンチェからフランスに入った味だと言う。

このような食の逸話を知るのがとても好きだ。

人の行き来が盛んだった地域では、今のロンドンのように新しい味をいち早くとり入れてきた。そして地中海諸国、北欧諸国など気候条件がよく似た地域では、同じような食材でよく似た料理が作られてきている。

ヨーロッパではどの国にもあるビーフシチュー。

先月はブルゴーニュ産の赤ワインをたっぷり使ってBeef Bourguignon(ブフ・ブルギニョン)を作り、2週間前はギネスビールを使ってビーフシチューを作った。

今回はどうしようか。ヴェネチア人によってコンスタンチノープルにもたらされたギリシャのビーフシチューであるStifatho(スティファド)を作ろうか。これは同じく赤ワインを使うけれどもシナモン、クローブ、ナツメグで味をつけるのが特徴。

ロシア風のBeef Storoganoff(ビーフストロブノフ)って方法もある。一説によるとビーフストロガノフの誕生はロシア貴族ストロガノフ家に働いていたフランス人の料理長が、料理のレシピを募集していたフランスの料理雑誌社に自分のビーフシチューレシピを送った時、主人の名にちなんでビーフストロガノフと名付けたのが始まりと言う。

ベルギーの代表料理であるビーフシチューCarbonade flamande(カルボナード・フラマンド)にはベルギービールを使い、タイム、ジュニパーベリー、ビネガーを加えて甘くとろみをつけて仕上げる。

ある日の晩ご飯。
ギネスビールで作ったビーフシチュー

まだまだ寒い日が続く2月はシチューを作る人が多いのでは?

各家庭新しい味がアレンジがされてまた多様な味が生まれてくるんかな?

我が家では、今週もしブルゴーニュ産の赤ワインが手に入ったらまたブフ・ブルギニョンのレシピにお世話になる予定。

いろんなクリスマス

今学期の最終日「 Have a lovely holiday, Merry Christmas」と言いながら生徒を送り出した。

このMerry Christmasという掛け合いは今やこの季節の決まり文句として使われてる挨拶。

でもMerry Christmasと言いながら「みんなそれぞれ違ったクリスマスを送るんやろな~。」とふと思った。

私が担当しているクラスの子供達の家庭では、ほとんどがクリスマスのお祝いをすると思うけれども、クリスマスの当日に教会にミサに行って宗教的な意味でのクリスマスを祝う家族は少ない気がする。

多国籍、多民族都市ロンドンの場合、クリスマスのお祝いのしかたも千差万別。我が家のようにロンドン在住の外国人同士の家庭なら、イギリス人の家庭とは少し違った、それぞれの国の伝統を取り入れたやり方でクリスマスを祝うと思う。

うちのクラスの中国人の子供達の家庭ではターキーは食べないというし、ユダヤ教徒の生徒はクリスマスは祝わないけれども、その日はプレゼント交換はして、ご馳走は食べると言っていた。日本と同じで、本来の宗教的意味なしのクリスマス。でもこの日は全く平日扱いのユダヤ教徒の家族も知っているし、本当に各家庭様々。

でもクリスマスを祝わない人がいるおかげで、もしクリスマス当日に買い忘れたものに気付いても、近くのイスラム教徒のアラブ人やアフガニスタン人が経営している食料雑貨店は空いてるのでこれがとても助かる。

スペイン、イタリア、ドイツ、デンマーク、フランスいわゆる大陸のヨーロッパ人はクリスマス当日じゃなくクリスマスイブに家族が集まってご馳走をいただく家庭の方が多いようだ。

昔スペインのマドリッドに住んでた時、仲良しのスペイン人ファミリーに招待を受けて、クリスマスイブにご馳走になったことがある。

今になると何を食べたかは覚えていないけれど、前菜の一番最初に出てきたアボカドとエビのプラウンカクテルが美味しかった事だけは記憶にある。

ポーランド人の友人Kが言うには、ポーランドではクリスマスイブのメイン料理は魚らしい。お肉を食べる人もいるだろうけれども、伝統的には鯉を食べると言う。チェコ人の同僚も24日はお肉を食べず、魚を食べるのが伝統といっていた。

フランス人の友達に聞くと、前菜に生牡蠣やフォアグラを食べたり、メインにはガチョウやターキーを焼く人が多いらしい。何より薪の形をしたクリスマスケーキのブッシュドノエルが有名!

イギリスではクリスマス当日に家族が集まり、午後のランチをゆっくりいただくのが一般的。

イギリス人宅ではやっぱりターキーを焼く人が多いと思う。グレイビーソース、クランベリーソースそしてブレッドソースといろんな味でターキーが楽しめる。

私はターキーよりも付け合わせのPigs In Blanketsというソーセージをベーコンで巻いたものや旬の野菜である芽キャベツ、パースニップなどの野菜、ターキーの中につめるスタッフィングが大好き。でもデザートのクリスマスプディングはまだ美味しいいのを食べたことがない。

イギリスの伝統を受け継ぐオーストラリアもクリスマス当日に家族でお祝いをする家庭が多い。

私の夫の家族はもう何年もターキーを焼いていない。真夏日にあたるクリスマスにオーブン料理をするのは暑くてやっていられないからだ。彼の実家は大量の海老、ローストハム、ターキーのハムがメインで、それらをコールスロー、ポテトサラダといろんな種類のサラダと一緒にいただく。

我が家の場合、夫がペスカトリアンなのでターキーを焼いたことはなく、ここ数年は生牡蠣やサーモンやマグロのカルパッチョを前菜にして、そのあとクラムチャウダー、メインはいつも魚料理、すずきか舌ひらめをいただいてきた。ケーキだけはオーストラリアの伝統ケーキであるパブロバを長女に焼いてもらう。

去年に続き今年も夫不在のクリスマス、今年はターキーを初めて焼くつもりだったけれども、「うーんどうしようかな~、ターキーって小さいのでも5キロはするし、買ったら最低3日間は食べ続けなあかんな」

「やっぱりいつも食べてるけれども味では勝るチキンにしとこか、」この会話の繰り返し。

今日中に決めなければ水曜日のマーケットでの引き取りにまに合わない。

それぞれのクリスマス。今年は例年と違うクリスマスを送る人が多いと思う。でもどの人にとっても美味しいものを家族や親しい人といただく平和な1日であってほしい。

フィッシュパイ

火曜日のランチ(給食)はフィッシュパイだった。サーモン、たら、グリーンピースとホワイトソースで作られたフィッシュパイ。

ランチの前にはすでにフィッシュパイらしきにおいが辺りを漂い、子供達と共に私も嫌な予感が!

ホールに入って目にしたものはやっぱりフィッシュパイだった。それを見た瞬間子供達も何人かのスタッフも、シェフには申し訳ないけれども「あーあ」と落胆。とにかにフィッシュパイは人気がない。

一緒に給食を食べるスタッフの中に一人だけ”給食は残すべからず”と言う考えの先生がいる。そしてその先生は大のフィッシュパイ好きで、フィッシュパイが出てくると必ず毎回「やったーフィッシュパイや!大好き!うれし~!」と大はしゃぎ。「今日はフィッシュパイ。なんてラッキーなの!」と言いながら子供達が食べているかどうか、いろんな席をのぞきにくる。

その人が近くに来るとみんな内心は「ここにこやんといてー!」と思いつつも「よかったですねー!」と引きつった笑いを浮かべ、なんとなく食べたふりをしてしまう。フィッシュパイが出るといつも起こる事。

フィッシュパイの付け合わせはブロコッリーと皮付きの小さなローストポテト。でも野菜嫌いな子供のほとんどがフィッシュパイも嫌いなので、子供達が食べるのは小さなローストポテトふたつほど。だからせめてデザートには果物を食べてもらうが、フィッシュパイが出てくる日はいつも子供達がお腹が空いてないかとても気にかかる。

フィッシュパイといっても全部が全部嫌いなわけじゃない。

昔オランダ人の友達のおうちでフィッシュパイをご馳走になったことがあるけれども、その時いただいたフィッシュパイには定番のサーモンやたら以外に海老、帆立、ムール貝他野菜も入っていてとても美味しく、その後すぐに自分でもまねてフィッシュパイを作った記憶がある。

でもみずから進んでフィッシュパイを作ったのはその後の人生で数えるほどかな?

ところがその私が、最近You TubeでLaxlada(ラックスラーダ)という北欧で作られるパイ生地なしのフィッシュパイのような料理を見て、めちゃくちゃ作りたく、食べたくなった。

その動画はふたりパパというチャンネルで、ふたりパパのひとり、日本人パパがサーモンとじゃがいも、卵、クリーム、牛乳、チーズそしてハーブのDillと一緒にオーブンで焼く料理Laxladaを紹介している。極め付けはVästerbottensost(ヴァステルボッテンスウスト)というスウェーデン産のチーズを使うのがみそらしい。Laxladaという料理じたいはフィンランドの料理らしいが、ふたりパパはノルウェイ在住。とにかく彼らがLaxladaを食べながら茶碗蒸しのようで美味しいといってるのが印象的で、是非作って見たいと思った。

魚はお刺身でいただくのが一番好きな私が、魚のクリーム料理を作りたくなるのは珍しい。でも娘達には、「Laxladaを作る前にまずは茶碗蒸しを作って」とリクエストされたので、まあやっぱりLaxladaを作るのはお預けかな?

やっぱりいつか北欧に行って、Laxladaを食べてみたい。北欧でならきっと美味しいフィッシュパイと出会えるはず。

懐かしのレシピ

もう24年ぐらい前になるけれども、その頃の私は地中海料理のレシピ本を出版するのが夢だった。地中海の様々な国の料理を学び、料理本の企画書を作って文化出版局に送り、企画の第一段階までは順調に進んだ。

でもその後「これは企画としてはすごくいいけれども、料理の素人のあなたの本を出版するのはリスク高なので、あなたと同じ志を持つカメラマンを探していい写真を作るよう」に言われた。その後世界情勢が変わって日本の料理本市場は和食指向になり「いい時期がくるまでこの企画は保留」と言われ、私のライフスタイルも出産とともに変化し、担当の編集者さんも定年退職というのも手伝ってこの企画は消えてしまった。

今から思えば、もったいない話。諦めた自分が悪かった!

当時はモロッコ人の女性から家庭料理を教えてもらっていた。代表料理のクスクスやタジン以外にも数々の野菜料理を学び、夢中になって教えてもらった料理を作っていた日々があったことも思い出した。

太陽の陽光を存分に受けて育った地中海産の野菜は本当に甘い。ロンドンで買ったオランダ産のトマトで作るratatouilleと南フランスで地元産のトマトで作るratatouilleの味が全然違うように、地中海産の野菜を使うとどれも美味しく仕上がる経験を何度もしてきた。

今朝その時かいたレシピ本を出して見ていたら、あるあるもうその存在すら忘れてしまっていたレシピが!

「あーこれ昔よう作ったなー」「このレシピ完全に忘れてたわ!」こんな繰り返し。どの人も経験する事やろうけれども、ここにきて久しぶりにまた作ってみたいレシピがいっぱい出てきた。

その中でトマトのペーストがあった。カナッペやパーティーでのおつまみとして最適で、めちゃくちゃ簡単に作れるので、甘そうなトマトが手に入れば作れる一品。

モロッコのアラビア語でSalata dial Maticha wa al Basla(直訳でトマトと赤玉ねぎのサラダ)と呼ばれるサラダと言うよりもデップのような料理。

まずは、赤玉ねぎ(2個)はみじん切りにして、青唐辛子(1つ)はタネをとって細い輪切りに、

トマト(5個)は皮をむいて細かく切る。

オリーブ油で赤玉ねぎが飴色になるまで炒める。

そこにトマト、青唐辛子、塩、黒胡椒を入れて汁気がなくなるまで約30分混ぜながら炒める。

これをよく冷やしてからオリーブやピタパンと一緒にいただくととても美味しい。ホームスのように常備食にもなる。同じようにズッキーニやおナスにもこのようなようなレシピが多いので、また教えてもらったレシピを書いていきたい。

とにかくこの週末は雨が多そうだし、真夏の、夢見るような青い地中海を思いながらゆっくり料理でもしてみようかな? 

ベジタリアン

私の夫は30年前まではベジタリアン、今では魚を食べるペスカトリアンになった。

彼がベジタリアンだったのは、動物愛護やライススタイルの観点からではなく、体が肉類を受けつけなかったからだ。

今でこそベジタリアンもヴィーガンも珍しくはないけれども、夫が子供の頃、オーストラリアの片田舎では、「お肉が食べれません。」なんていうと「何やそれ、何をふざけてんねん!」ってな感じで見られていたらしい。友達のおうちで食事をご馳走になるのがとても恐くて、お泊まりするときは、行くよりも自分の家に友達を来てもらうようにしていたらしい。

お肉が食べれない夫を心配した彼のお母さんが、彼を医者に連れて行くことに。

「この子は自分の体が必要としているものはちゃんと食べてますよ。卵は週四回あげるようにして、あとは豆などからタンパク質をちゃんと取ってください。」この医者のアドバイスがあってからは彼の家族も夫の肉なし食生活を受け入れた。でもBBQ大国、ステーキサンドウィッチ王国のオーストラリアで夫が普通に外食を楽しめるようになったのは、彼が成人してメルボルンに引越ししてレバノン料理と出会ってから。それまでは家族がローストチキンを楽しんでる時、彼はもっぱらフレンチトーストやサラダを食べて喜んでいる日々を送っていた。

夫が魚を食べるきっかけになったのは、お刺身と握り寿司がきっかけ。彼の家族はイギリスやアイルランドの食文化を受け継いでおり、オーストラリアの内陸部に住んでいて新鮮な魚があまり手に入らなかったことも手伝って、美味しい魚料理を知らずに育った。そんな夫も今では魚をさばけるようになったからすごい。

とにかく魚が食べられるようになって、食のレパートリーと外食先の選択肢もひろがった。

今のロンドンでは、ベジタリアンはレストランの選択にほとんど問題がない。ほとんどのレストランがベジタリアンフレンドリーだし、というかベジタリアンの選択肢がないとレストラン業も経営していけないと思う。長い間お肉料理だけが専門だったイラン料理のお店でも、最近では野菜だけのシチューとかがメニューに上がっているし、お洒落なベジタリアンレストラン、ヴィーガンレストランも増えている。インド料理、レバノン料理、イタリア料理、マレーシア料理なんかは野菜だけの料理も多いので、ベジタリンにはとても人気がある。

私自身はまだ行った事がないが、ロンドンにあるベジタリアンのレストランMIldredsは大人気だ。

大学でSustainability(環境の特続可能性)を専門に学んだ長女や彼女の同世代の友達には、牛の飼育による環境への悪影響を考慮して、なるべく牛肉を買わない、食べないというスタンスをとっている若者が結構いる。牛の飼育にかかる水の使用量が他の畜産物にからべて以上に多いらしい。

私の周りにも、牛肉はあまり買わないという友人が多い。

実際、野菜だけの夕食にする時は、低コストで、なんか体にいい事をしている気分にもなってくる。私が和食のベジタリアン料理を作る時は、野菜の天ぷらまたはかき揚げ丼に、千切り大根の煮物、ピーマンの炒め煮、人参のきんぴら、白菜の炒め煮、揚げなすと家族が大好きな料理が多くて、肉や魚がなくても充分に美味しくいただける。

ある日、日本に出張に行くことになったベジタリアンのインド人の友達に、日本で食べれる物のリストを作った。揚げ出し豆腐、なずの田楽、大根の煮物、焼きおにぎり、山菜そば、野菜天ぷらうどん…

ロンドンに戻ってきた彼は「日本は今までいった国の中でも一二を争うほどベジタリアンフレンドリーな国や!ベジタリアンヘブンや!」と興奮して、日本で何を食べたか逐一説明してくれた。

精進料理もあるし、確かに家庭料理には野菜だけの一品も多いかな?

普段は牛肉に対して特別な思いがない私。でも日本に帰って焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼きを目の前にしたら、その時はもう食べる、食べる。やっぱり美味しいから、食べずにいられない。

まあどの人も自分の好きな物を食べて、健康にも考慮して生きるのが一番やね。

これも長女が作ったセルリアックの
ステーキ
長女が作ってくれたブロッコリー、サバ
入りトマトソースのスパゲティー

ボルシチ

今日はロシア人のママ友から教わったレシピでボルシチを作った。

ボルシチと言えば、ロシア料理と思いがちだけれども、その発祥の地はウクライナと言われている。ウクライナ、ロシアそしてポーランドが自国の食べ物と主張しているボルシチは東ヨーロッパ、ギリシャでも作られている。

今日は具を大きく切りすぎた…..

赤かぶ、赤玉葱、赤キャベツからでる赤紫色がとてもきれいなボルシチ。それ以外にトマト、人参、セロリアック、じゃがいも、唐辛子、牛肉、豚肉または羊肉やソーセージが加わる。もちろん地域によっても家庭によっても素材が異なるし、その時家にあるもので作られてきたはずだ。

ボルシチを作りながらそれらの国の事を考え出した。

私が初めて話したロシア人は、1990年ロンドンから東京に行きの飛行機で隣り合わせになった人だった。ベルリンの壁が崩壊してからのロシア情勢がどうなっているかとても興味深かったけれども、まだロシアはソビエト連邦共和国として機能していた頃だったので、さすがに政治的な事は聞けなかったのを今でも覚えている。

その後、1993年にトルコの黒海沿岸地域を旅している時にロシア人、ウクライナ人、ベルルーシ、グルジア人など旧ソビエト連邦出身の人々と話せる機会に恵まれた。彼らは自国の物をはじめあらゆる品を持ってきてトルコの青空市場で売りさばき、それで得た利益で今度はトルコでタオル、シーツ、ベットカバーなどのいろんな布製品を買って、自国に戻って売っていた。当時のトルコではこれをルスバザールとよんでいた。

異国情緒たっぷりのルスバザールに魅了されて、日々ルスバザールに顔を出していた私達夫婦。

夫がロシア人、私がウズベキスタン人の商人に間違われ、私達の持ってたNikonのカメラを売ってくれと言われたこともあった。

またある時はロシア人のおばちゃんがひつこく「..コン、..コン」と言って追いかけてきた。何かと思うと彼女はキリストの画像であるイコンを手に持っていた。これを私に売ろうとしているらしい。「コン、コン」と聞こえるその発音とまるで密輸品でも扱っている用に隠しながらその画像を私に見せる姿が滑稽でおかしかったのを今思い出した。

ルスバザールにきていたグルジア人の女性からフォークとナイフのセットを買った時は「私が初めてあった日本人や!」と感激してもらって、おまけまでいっぱい付けてもらい、同じく感激した私はその彼女に持っていた日本製のハンカチを手渡した。その瞬間熱烈なハグをしてもらい、小さな国際交流にお互い熱くなったけ!彼女達は今どんな生活をしているんかな?

そお言えば今から30年も前に知り合ったポーランド人のクラスメイトにも、ポーランドのボルシチのレシピを教えてもらった。確かポーランドのボルシチはウクライナやロシアのボルシチと違って、煮込んだ野菜は取り出して、お肉とスープだけでいただだくらしく、ロシアとは違うという点を強調して説明してくれたのを覚えてる。

30年前はあんなに遠くに感じた隣国ロシアだけども、今ではロンドンでも日本でもロシア人やウクライナ人と出会える機会はあるし、日本からウラジオストックに週末に旅行なんていうのもできる。

でもなんか、世界が広くて遠かった時がちょとだけ懐かしく思えてくるなー!

とにかく今夜はサワークリームと、黒パンでボルシチを楽しもう!

フュージョン料理

外国人が多く住むロンドンには、必然的に国際結婚、国際カップルも多い。むしろ国際結婚という固有名詞を使って表現するのではなく、誰々のご主人はカナダ人とか誰々のパートナーは日本生まれというふうに表現している気がする。

多国籍都市ロンドンでは国際結婚は特にカテゴリー別にするほどのことではないからか?

私の仲良しの友達も、日本人とイギリス人、レバノン人とアメリカ人、オランダ人とイギリス人とパートナーが外国人。当たり前だけれども国の数だけ、いろんな国の組み合わせのカップルが存在する。今まで出会った国際カップルはトルコ人とコロンビア人、ソマリア人とドイツ人、タイ人とドイツ人、台湾人とイラン人、韓国人とデンマーク人、ポーランド人とアルゼンチン人、ジンバブエ人とアイルランド人、イタリア人とエジプト人、マセドニア人とギリシャ人、フランス人とブラジル人と限りなく続く。

そんな国際カップル家庭ではみんな日々何を食べているかとても興味がある私。

いつも「今日の晩ご飯、何作るん?」と友達に聞いている。まあ普段のロンドナーの食事はパスタ料理、スープやシチュー、お肉や魚のグリルとサラダと似たり寄ったり。

でもやっぱりそれぞれのお国の味が見え隠れしているから面白い。

料理も国際結婚の影響を受けていている。フュージョン料理だ。

フージョン料理はシェフや移民によって作られてひろまっていったコンセプトと言うけれど、家庭ではもっと昔からフュージョンしていたはず。

オーストラリア人の夫はイースト菌と野菜を混ぜてつくられたオーストラリアの国民食、発酵食品Vegemiteをグレイビーソースを作るときに隠し味として入れるし、私もそのやり方を伝承している。私は時々野菜をトマトソースとお醤油で煮込み、刻み海苔をかけてパスタを食べる時もある。

パルメザンチーズがなかったら、チェダーチーズでピザを作る人もいるし、トルコ人の友人は巻き寿司を作るときにフェタチーズ巻きも作る。バスマティ米でお寿司を作る人もいるし、ローストチキンのソースをお醤油ベースにする家庭もあり。お友達のS子ちゃんは抹茶テラミスを作ってくれるし、黒ゴマ味のアイスクリーム、カレーソースとチップス、日本で人気のタラコスパゲッティーもある意味フュージョン料理だ。

フュージョン料理は今や料理のカテゴリーの一つ。ロンドンではアジア料理のフュージョンレストランが大人気でオイスターソースで炒めた焼うどん、ココナッツ風味のカツカレーとアジア各国の味がミックスされている。

ベトナム料理のバンミーもベトナム料理とフランス料理のフュージョン。LA生まれの韓国とメキシコ料理のフュージョンのKorean Tacos, Korrito、イタリア料理とメキシコ料理のフュージョンはTaco Pizza。カナダ在住の日本人シェフが作ったと言われるSushi Pizza.。ペルーに移民した日本人が現地の食材で作った和食はCeviche Nikkeiなど日系ペルー料理として定着していてる。最近はロンドンのペルーレストランについて書かれてた記事をよく目にし、Nikkeiという名前がついているメニューを何度かみかけた。

人が動き、交流すると食も動き、融合していく。「これからもいろんな国の味が融合されて、どんどん新しい食べ物が生まれでくるんやろうな。」とレバノン産のごまのペーストTahini入りのクッキーを食べながら思った。

カレー

「ロンドンではみんな日本のカレーって言えばカツカレーの事と思ってる。全然わかってへん!」と次女が鼻息を立てながら言う。

彼女が高校生の時、一度ランチに日本のカレーを持たせたら「あ、カツカレー食べてんのん?」って友達に言われたので「カツカレーはパン粉で揚げた豚肉をカレーの上に乗せるやつやけれど、私が食べてんのはカツなしの普通のカレーライスやで!」と説明。でも相手はカツカレーイコール日本のカレーと思いこんでいるので、目が点になっただけで全然わけがわからなかったらしい。

他にもアジア料理を出すお店でカツカレーを注文したら「チキンですか?ポークですか?」と聞き返され「はーって感じやったわ!」とまた次女が言う。

長女に至っては「カツカレーのソースなしをください。」って言ってる人を見たことあるらしい。それは単なるトンカツやって!

日本のカレーはロンドンでも知る人ぞ知る、人気のある食べ物になってきている。

今まだあるかどうか知らないが、今年のはじめ頃までは大手スーパーのMarks and Spencerでもパックに入った日本のチキンカツカレーが売られていて、買っている人も何人か目撃した!

他のスーパーSainsburyのチキンカツカレーにはココナッツミルクが入っているらしい。それを見た長女は「あれは日本の味と違う!」って怒っていたけれども、こうやって現地になじむ味になっていくんやろうね。

日本でお馴染みのCoco一番もロンドンに進出してきている。この間Coco一番の前を通ったら結構人が入っていて賑わっていた。

日本のカレーはこれからもっと人気がでてくるかも。

我が家もみんな日本のカレーが大好きだ。特にカレーを作った翌日、更に味がしみて美味しくなっているカレーを朝ごはんに食べるのが大好き。

私がやる気のある日は、ちゃんとだしを作ってから残りのカレーをカレーうどんにしていただく。そんな時は家族のみんなにめちゃくちゃ感謝される!

嬉しい反面、本格インドカレーでもなく、日本にあるカレー専門店でいただくようなカレーをいまだに一から作ったことのない私は、ちょっと後ろめたい気分になるのも事実。

日本のカレーはインドからイギリスに伝わったカレーが、イギリス風にアレンジされて日本に伝わったらしい。味が変化しさらに美味しくなった日本のカレーが、今イギリスに里帰りしている現状がなんか面白く感じられる。

料理

つくづく思うけれども、日本の主婦はすごい。

毎日朝、昼、晩ご飯以外にお弁当も作る。日本にいる友達は「手抜きも多いで~」とか言うけれども、毎日それをするのは大変だ。

ましてやフルタイムで仕事をしながら、料理もこなすのは至難の技。

確か私のおばあちゃんも、おじいちゃんが在宅勤務だったため、ほんとに毎日、それも同じ時間に昼ごはんを用意していたのを覚えている。昼ご飯の内容は、うどんやお蕎麦だったけれども、それでも毎日、もしくは一年のうち363日は家族のために料理をしていた。

ごくたまに、毎日の夕食作りはご主人が担当ってな話を聞く。奥さんの方が料理が苦手か、もしくはご主人が料理がすごく上手で、自分が美味しいものを食べたいから自分が作った方がいいと思って作っているケース。ほとんどがイギリス人同士のカップルだ。

学校でもお父さんがスナックを用意してくれるっていう子が何人かいる。

そおいえば、昔イギリス人のママ友が「料理は毎日しないけれども、私が食事の用意はするよ!」と言っていた。出来合いのものを買って、レンジかオーブンで温めるって事やね。

全て手作り派には受け入れがたいかな?

ある日同僚と前の晩に何を食べたかって話になった。新婚早々で共働きの彼女、その晩は家に何もなかったらしく「昨日はめちゃくちゃ疲れてたから、Egg with soldiersを食べた。」って言うので、「サラダかなんか野菜は食べへんだん?」と聞くと本当に卵だけだと言う。Egg with soldiersはゆで卵スタンドにゆで卵を入れて、スプーンで卵の頭の部分を割り、細長くきったトーストをゆで卵につけて食べる、イギリスらしい一品。それを聞いた時日本人の、食べるのが大好きな私は一瞬「うそーそれだけ?」っと思ってしまったけれども、確かに私がご飯の上に目玉焼きを乗せて、お醤油をかけていただくのと同じやねと妙に納得もしてしまった。

とにかく日々のご飯作りは大変だ。料理人もたまには楽をしないと!

長女が作ってくれた坦々麺

ロックダウンになってから、友達のほとんどが口を揃えて「家族が揃うのは嬉しいけれども、毎日朝、昼、晩と料理ばっかりしなあかんから、めちゃくちゃ忙しい!」と嘆いていたのも思い出す。

でも時には手を抜かないと毎日はやってられない。

ロックダウン中の我が家は、娘達が試験期間だったから、私は頑張ってほぼ毎日ご飯の用意をしていたが、今は試験が終わったので、料理好きな長女ができる日は彼女が夕食を作ってくれている。今まで料理をしてこなかった次女にも、当番を作って週に一回夕食を作ってもらうことにした。長女のインタンシップが始まるまでの一ヶ月間の贅沢だけれども。

次女が作ってくれたQuesadilla

でもまた食べさせる人がいるから、料理人の腕もあがっていくのも事実。

もし「今何が一番食べたい」かって聞かれたら、「誰か料理上手な日本人のお母さんが作る手料理が一番食べたい。」って答えるやろうなー。あー食べたい母の味!

おやつ

イギリスの小学校では午前中の休憩時間におやつを食べる習慣がある。私が働く学校でも20分の休憩があって、子供達はその時に各自持参したおやつを食べる。

おやつ(スナック)の定義は家庭によってかなり異なるから面白い。日本ではおやつと言うとお菓子的な印象があるが、うちの学校では、先生方の指導もあってか、低学年の児童は果物、ステック状に切った野菜、レイズン、チーズなど栄養価の高い食品を持ってくる。高学年になっていくとポテトチップス、ビスケット、ポップコーンなどいわゆるお菓子を持ってくる子が増えていく。

日本人の私も、はじめは子供のおやつに何をもたせたらいいかよくわからず、ハムサンドウィッチとか、おかき、果物をベースにしたお菓子、ヨーグルトなどをもたせていた。

親として自分の子供が家で何を食べているか把握していたので、おやつには甘いものを食べてもあまり気にならなかったのが本音。

でもこの間、うちのクラスの子供達のおやつの中身を見てたまげた!

セロリときゅうりのステック、半分に切った人参のみ、ミニトマトだけを持ってきてる児童が4人ほどいた。その中の一人が「見て、私のスナック、セロリだけ!こんなん食べたくない~!」と自分の持ってきたセロリを私に見せた。「確かに!」

その子の隣にはチョコチップ入りのクッキーを食べていた子が座っていたからなおさらそう思ってしまった。

その子の親は、自分の娘があまりにもよく食べるので、子供の食事に糖質制限をしてるらしく、「給食のデザートの量は少なめにしてください。」と学校にも頼んできた。親として我が子の健康管理をちゃんとしているのは素晴らしい。でも食べ盛りの子、それも標準サイズのその子がなんか気の毒に思ってしまう。

野菜や果物しか持たせてもらえない子供は、他の子がビスケットやポップコーンなどを持ってきたら、羨ましさもあって、いつも私にその事実を報告しにくる。これだけはそれぞれの家庭の考えがあるから仕方ない。でもその子達の気持ちもよくわかる。

健康志向のスナックといえば最近は、韓国海苔を持ってくる子が多い。おやつにぴったりなサイズの物がスーパーでも売られているし、甘いものじゃないから親も喜んで買っている。時々子供達が海苔を一まいくれたりしたら「あー海苔がおやつになるなんて、不思議な感じ!」と時代が変わったのを痛感する。

私が今までに見た中では、アラブ人、イラン人、トルコ人の子供たちが持ってくるスナックが栄養価と中身において一番レベルが高いように感じた。美味しそうな乾燥ナツメヤシやイチジク、オリーブ、野菜とホムス、チーズ入りのパイ。これも食習慣の違いやね。

もう名前は忘れたけれども、子供の頃あられの中に時々混ざっていた、小さな乾燥した魚や昆布をおやつに食べさせられたことを思い出した。決して美味しいとは思ってなかったことも。

せめておやつぐらいは好きなものを食べさせてあげたいと思う反面、毎日ポテトチップスやチョコレートを持ってくる子を見ると、首を傾げてしまうのも事実だ。

すべは適度にするのが一番やね。